はじまりは二〇〇三年に盛岡の啄木・賢治青春記念館で開催された「ぼくらの時代展」である。団塊の世代である我々が幼少時代を過ごした古き良き盛岡が懐かしく、その町並と暮らしを再現し、昆虫採取セットや玩具など思い出の品々を溢れんばかりに展示したものだが、これが記録的な大当たりとなった。
いかにあの時代の盛岡に郷愁を抱いていた人が多かったかということだろう。と同時に子供や孫を連れての客も目立った。自分たちの生きてきた時代を教えたかったのだ。家族の絆が深まったとの感謝の言葉も寄せられた。
私は主催者の一人としてこの展示に関わっていたのだが、これほど手応えを感じたイベントは他にない。ぜひともこの展示を恒久的なものにしたい。もっと規模も大きくして広がりももたせたい。アイデアは次々に生まれたが、肝心の展示場を見付けられずにいた、市民の郷愁だけでなく盛岡の観光の中心軸にもしたかったのだ。
盛岡にはいくつも名所旧跡があるけれど、短時間ざっと眺めれば済むものが大方で長く腰を据えて楽しむ場所がない。それが観光都市に付き物の俗化を防いでいる美点であるのを承知しつつも、観光客の側に立てばやはり寂しく残念に違いない。
彼らは限られた時間の中で存分に盛岡の良さを味わいたいのだ。旅の楽しみである「食べる。見る。買う」が一カ所で満喫できる場所があれば、より深く盛岡を知ることができる。
どうせやるならそこまで、という思いが実現をここまで遅延させる結果となった。構想十一年目にしてそれがようやく形となった。と言っても完成ではない。
「ぼくらの時代展」が入場者の要望や関心に応じて半月ごとに大幅な展示替えや催しを企画したように、ここも運営の基本路線は入場者の楽しみを最優先としている。
わずか半年後にはオープン時とまるで異なる姿になっているかも知れない。育てるのは我々ではなく盛岡市民であり観光客の人たちだ。こういうコンセプトではじめられる施設は全国でも珍しいはずである。楽しかった盛岡を残したい。盛岡をもっと楽しくしたい。盛岡を多くの人に伝えたい
皆さんもこれにぜひ加わっていただきたい。